刃物考

Wrote by Roki Sep.2000, Dec.2001

切るための道具について

切り絵だから「切る」ことはかなり基本です。切るためにはナイフが要ります。これがすっごく重要なんだな。

路鬼は俗に言う「アートナイフ」ってのを使っています。切り絵を始めたときに買ったのがこれだったのです。
初心者にはこれ、なんてものの本やホームページに書いてあったりします。

反対!

不覚だったよ。もし私がこんなに切り絵に一所懸命になるって分かってたら、最初から「プロ用」ナイフを使ってたよ。初心者の方、だまされたと思ってプロ用の小刀を手に入れてください。それで、切れ味の快感を覚えてください。プロ用は違うんだよ。プロ用…なんのプロ?

日本はむか~しっから非常に質の良い「紙」生産地でした。和紙です。その和紙を切るためのナイフ(日本では「刀」というな)も、当然よく発達したのです。今それは、着物の柄の型紙を彫るための小刀。日本で紙を切るプロといったら、この職人さん達でしょう。

アートナイフと小刀の違いはなにか?

最大の違いは小刀は研がなくてはいけない、ということです。砥石が要る。研ぐ技術が要る。プロの技術です。
路鬼も途中で小刀に乗り換えようとしたことがあります。半年がんばりました。分かったのは、研ぐ技術は半年では(自分の必要とする水準に)ならなかったこと、アートナイフなんぞは、ちゃんと砥いだ小刀の足元にも及ばないこと。小刀で和紙を切るのは「快感」であること。そして、私の使う洋紙やその他のナンデモアリには、小刀はもったいないこと。

和紙ではない作品をつくっている間に、研ぐ練習がおろそかになり、結局使えなくなってしまいました。

でも惜しいんだよ。あの快感。
いつか路鬼がナンデモアリに飽きたら、その時はてってーてきに小刀の技術を習得します。

だからね、もしこの文を見てくれてるあなたが、初心者だったら、路鬼はプロ用の小刀と砥石を使うようにお勧めします。最初に使えるようになるべきです。(’00)

腕の半分は道具です。

後日談

Wrote by Roki Dec.2001

2000年、路鬼は砥石を手に入れました。やっと、やっと、やっと、小刀が砥げる様になったのさ。
なーんだ、それなりの砥石を使えば、それなりに砥げるようになるんじゃないか。
なーんだ、小刀の産地にはちゃんとした砥石があるんじゃないか。
なーんだ、当たり前だけどプロの道具はプロに聞けばいいんじゃないか。
しかも、この砥石、包丁を砥ぐのに使ってもすんごく切れるようになるんだよね。ゾーリンゲンのステンレスの包丁の切れ味が戻った。アートナイフの刃をちょっと研ぐにも良い。

さて、路鬼が小刀を砥げる様になったのにはわけがあります。
それまで路鬼は、プロのやるように砥げないとダメだと思っていたのです。職人さんの小刀のような形にならないと…と思っていました。
でもさ、路鬼はアートナイフを使っていて、すでにそれが使いやすくなっているんだから、アートナイフと同じ形になればいいんじゃないの?
そうです。刃物は自分が使いやすい形になれば良い。しかも砥いで刀の形を作るのもやめた。石が鋼を擦り減らすまで、同じ形に自分の体と刃をキープして運動しつづけるなんてこと、路鬼にはとうてい出来ないっ!のだ。

画期的な(最低の)やり方。最初にグラインダーで刀の形を作ってしまう。それにちょっと刃をつけておしまい。短時間なら体も刀もキープできるからね。その時間内に刃が出来るように刀の形を整えておいて、効率の良い砥石を使えば良いんじゃ…

いいのか、おい…。
いいんだよん。それで用が足りるなら。

そういう訳で、トンでもないやり方だけど、路鬼は小刀を砥いで紙を切れるようになったのでした。